ユキ様のプリズムショーを出来る事なら全人類に見てもらいたい、という話

CGがえげつない

 とにもかくにもこれ。キンプリ知らない人にも映像美を楽しんでもらいたい。演算がえげつなくてもはや狂気。

着物のCGってカクカクしてるのが多くて個人的に正直あまり好きではなかったんだけど、着物の質感、とくにしわの再現度がすごい。あとステージの床が水面になってるんだけど、そこに映る姿が「水面特有のシルエットでかつ着物と分かるように」つくられてるのが大分おかしい。光の使い方でキャラを際立てる手法、アイカツみがある…と思ったらスタッフがアイカツの人で笑ってしまったよね。女性向けだろうが手を抜かないスタッフの意気込みを感じた…。

ステージまるごとユキ様の世界観

 ユキ様のステージっていい意味で「ステージ感」がなくて、何というか「異世界に飛ばされた」感がすごいんだけど、床は全面水面、頭上にあるのはカーテンのように広がる満開の藤の花、空には満月が昇っていて、月夜の幻想的な光の中で艶やかな着物をまとって一心不乱に舞う…。「床」や「天井」の概念を感じさせない空間だし、ユキ様のプリズムショーはステージというより「舞台」なんだろうな…としみじみ思ってしまった。だからユキ様の視点になった時に視界にファンの青いサイリウムがばっと目に入ることで、ユキ様が立っているのはステージなんだと実感して胸がいっぱいになってしまう。

 細かいことを言うと「息の途絶えるその時までは」の時にバックが一気に赤く染まって、心臓を抑えながらがくっがくっと頭を倒すふりをするのが本当に命が尽きそうな感じが出ていて最高だし、ユキ様のロック好きな所と舞台にかける「命をかけるほどの本気」が出ていて最高。

プリズムジャンプの構成が神

 プリズムジャンプの構成自体が静→動→静→動なのがメリハリがあっていいし、どんどん演出が派手になっていくのも単純に気持ちがあがる。それに序盤で「スプラッシュ」「スパイラル」という所謂プリリズ伝統の技を入れつつも自分の世界観で表現し、さらに後半でユキ様オリジナルの業を入れてくるところが、「歌舞伎界の伝統を大切にしつつもオリジナリティを入れることで自分自身の技として魅せる」というユキ様の舞台観がまざまざと出ていて大好き。

 

 「国立屋スパイラル」で遺伝子のDNAを滑りながら「もう国立屋の血からは逃げない!私は太刀花雪之丞として生きる!」と覚悟を決めて「にらみ」を決めるシーン、とてもわかりやすく描かれて好きなんですけど、もうちょっと深読みすると「プリリズの血を引き継いだという演出」にも見えるんですよね…。

 プリリズの伝統は「抗えぬ親子の血」「呪いと継承」「自分自身のアイデンティティの確立」だと個人的に思っているんですが、実質シリーズ第一話のユキ様の話にこの要素がふんだんに出てきたことで古参勢にも「プリリズだ‼」というのが示せていると思うし、いわゆる「女性向け」の味付けに変わるのでは…と危惧していた人たちにも「キンプリの道筋」を明確に示している話だと思っているので、そういう意味でも「DNAを滑走してるシーン」は「ユキ様自身の血筋」も「プリリズの血と魂」も受け継いでいる描写のようにも見える…。

 

 そして「にらみ」、寄り目で決めるので一見ギャグにも見えるけども「にらみ」は歌舞伎の中でとても重要な意味合いを持っていて、まず誰にでも出来る技ではなく「成田屋」のみが出来る伝統的な所作。そして「にらみ」は「ありがたいもの」として所謂「厄除け」という意味もあると言われている「見得」の一つ。

 キンプリの世界の「国立屋」が所謂「成田屋」と同等の立ち位置と考えると、「国立屋」のみが許された所作「にらみ」で「見得を切る」ことで「国立屋の力はもう逃げない」と覚悟をくくり、そこからの怒涛の「藤娘」と「連獅子」なんですよね。流れが綺麗で、舞台を重んじるユキ様だから出来る構成だな…と感動してしまった。(キンプリはキャラごとで生い立ちが違うし、そのキャラクターの集大成がプリズムショー、プリズムジャンプなので、キャラごとでアピールの仕方も違うのが醍醐味!)

歌詞が神

 歌詞がもう神でユキ様の舞台にかける思いがまざまざと出ていて胸がいっぱいなんですが、出だしの「生を受けたその意味を辿る」でオタクはもう死んだ(早すぎる)。

 「この身体に流るる血はゆらりゆらり揺蕩う炎 鮮やかにこの身を焦がし空へと翔べ」なのがユキ様の生き様そのもので…もう…自身の血に流れる国立屋の血から逃げていたユキ様が自分の血を燃やしながら翔ぶんですよ、私は自分の魂をガソリンのごとく燃やしながら生きる人間が大好きなので、もう大好きになるしかないんですよね…。

 あと「いずれ滅ぶこの身体 ならば共に死ぬまで 憑いてみせろ そのめ(女)よ ここへ」でそのめが「女」を指してるのが分って、藤娘をここで憑かせてる(「憑いてみせろ」なのがいいよね…)が最強すぎる。ユキ様は憑依型。

 序盤の「このめ(女)」は藤娘のことだと思うんだけども、「我がめ(女)よ しかと今宵脳裏に焼き付けよ」の「女」はお母さんのこともかかってるんじゃないのか…?と思うとやばかった。

 ユキ様のお母様は国立屋の血を引きながら女であるがゆえに舞台に立つことすら許されない(お父さんの稽古にくっついてる位だから純粋に歌舞伎が好きなんだと思うし)、自分が女として生まれた以上「子孫を残すことが存在意義」で、しかも子供が苦しんでいるのを助けることもできない。だからあの自傷行為であり「産んでごめんね…」なんだろう。そして母の自傷行為はユキ様のトラウマになってたわけだけども、同時にユキ様のプリズムショーにかける思いを肯定したのもお母さんでショーに出場するのを後押ししたのもお母さんで、その母の無念・想いもユキ様は「舞台」の中に織り込むことで昇華させたのではないのかな…。

プリズムショーはその人間の集大成

 「弱み、悲しみ、醜さもすべて、舞台でさらけだす!」の言葉通り、プリズムショーはそのキャラクターの集大成で、キンプリ自体がいい子ちゃんが揃ったいわゆる「キラキラした優しい世界」だと思われがちだけども、その裏でもどうしようもない現実や理不尽さ、陰謀や毒親、色んなものが渦巻いていて、でもそういうどうしようもない世界でも「愛」はあるんだと示す手法の一つが「プリズムショー」だと思ってるんですけど。一見負の感情でもある「弱さ」をも舞台に落とし込むことで「煌めき」に変えて人を魅了する、そういうところが私は大好きで…。パパ上の言葉を借りるとまさに「弱さは強さになる」んですよね…。今までの葛藤や困難をショーで昇華するのがプリリズの文脈なのでオーソドックスに1話で示していたのが尚のこといい。

色んな人に軽率に見てもらいたい

 総評すると↑これなんですけどあまり人に押し付けるのもな…って感じで。でも本当にユキ様のプリズムショーは入り口にふさわしい、単純にクオリティが神なので作品を知らなくても楽しめるし、中身を知ったらもっと楽しめる多重構造になっているので、色んな人に軽率にふらっと見て欲しいな…と思う。

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